売却の基礎知識

相続登記の放置は危険|相続人が全国15人になった実例を神戸の不動産会社が解説

「うちは特に揉めていないから、名義変更は急がなくても大丈夫」——そう思っている方に、神戸都市開発が必ずお伝えしていることがあります。相続を放置している間も、時間は止まってくれません。
今は2人か3人の相続人で済む話し合いが、10年、20年と放置されるうちに、会ったこともない親戚を含めた10人、15人での話し合いに膨れ上がることがあります。

ここで、絶対に知っておいていただきたい大原則があります。相続した不動産は、遺産分割が終わるまで相続人全員の「共有」状態にあり、これを売却するには、相続人全員の同意(実印による押印)が必要だということです。
1人でも反対すれば、他の14人が賛成していても、売却は一歩も進みません。相続人が増えるということは、単に手続きが面倒になるだけでなく、「全員一致」というハードルそのものが、加速度的に高くなっていくことを意味します。

これは脅かすために言っているのではありません。神戸都市開発が実際に担当した案件で、そうなったケースがあるからです。この記事では、相続を放置することでなぜ相続人が増えていくのか、その仕組みと、実際に相続人が全国15人にまで膨れ上がった売却案件で何が起きたのかを、包み隠さずお話しします。

相続を放置すると何が起きるのか|「数次相続」の仕組み

相続が発生したとき、遺産分割協議(誰が何を相続するかの話し合い)をせずに放置してしまうと、その間に相続人の誰かが亡くなることがあります。すると、その方が持っていた相続する権利は、さらにその方の相続人(配偶者や子どもたち)に引き継がれます。
これを「数次相続(すうじそうぞく)」と呼びます。

これが一度で終わればまだいいのですが、放置期間が長引くほど、数次相続は連鎖します。最初は親から子への相続だったものが、その子が亡くなればその孫へ、さらに孫の代でも誰かが亡くなれば、また次の世代へと権利が枝分かれしていきます。
相続人の人数は、放置した年月に比例して増えていくと考えていただいて構いません。

経過年数の目安相続人の状態
放置なし(すぐに手続き)配偶者・子どもなど数人
10年放置相続人の一部が死亡し、数次相続が1回発生。人数がやや増える
20〜30年放置数次相続が複数回発生。相続人が10人を超えることも珍しくない

しかも厄介なのは、人数が増えるだけでなく、相続人同士の関係性がどんどん薄くなっていくことです。最初は兄弟姉妹での話し合いだったはずが、次の世代になれば「いとこ」、さらにその次になれば「会ったこともない親戚」になっていきます。

なぜ一人でも反対すれば売却できないのか|共有不動産と「全員同意」の壁

ここで、法律上の仕組みを少しだけ説明させてください。専門用語が出てきますが、ここが理解できると、相続放置がなぜこれほど危険なのか、根本から腹落ちしていただけると思います。

遺産分割が終わっていない不動産は、法律上「相続人全員の共有」という状態になっています。この共有状態にある不動産に対して、相続人ができる行為は、内容によって必要な同意の範囲が変わります。

行為の種類具体例必要な同意
保存行為建物の簡単な修繕、不法占拠者への明け渡し請求相続人1人でも可能
管理行為短期の賃貸借契約など持分の過半数の同意
変更・処分行為売却、大規模なリフォーム、建物の取り壊し相続人全員の同意

不動産を売却することは、この表でいう「処分行為」にあたります。民法上、共有物の処分には共有者(相続人)全員の同意が必要とされており、これは相続人が2人であっても15人であっても変わりません。
過半数の賛成では足りず、たった1人が反対するだけで、売却そのものが法律上できなくなってしまうのです。

これは、話し合いが「難しくなる」というレベルの話ではありません。全員の実印と印鑑証明書がそろわなければ、そもそも買主への所有権移転登記自体を進めることができない、という手続き上の絶対条件です。
相続人が増えれば増えるほど、この「全員」を揃えることの難易度が跳ね上がっていく——これが、相続放置が「時限爆弾」と呼ばれる本当の理由です。

もちろん、どうしても同意が得られない場合の最終手段として、共有物分割請求訴訟(裁判所を通じて共有状態を強制的に解消する手続き)という方法はあります。ただし、これは時間も費用もかかるうえ、必ずしも希望どおりの結果になるとは限りません。できることなら、全員の任意の同意によって、円満に売却まで進めるのが一番です。

相続人が増えるとどうなるか|2人での話し合いと15人での話し合い

相続人が増えることの本当の怖さは、単純な人数の問題ではありません。話し合いの難易度が、人数に比例するどころか、それ以上のペースで跳ね上がることです。

項目相続人2人の場合相続人15人の場合
話し合いの手間直接会って数回話せば済むことが多い全員の連絡先を調べるところから始まる
関係性お互いをよく知っている面識のない人が大勢含まれる
意見の集約比較的早くまとまる一人ひとりの意向を確認し、粘り強く調整が必要
手続きの負担書類のやり取りも少ない全員分の戸籍・印鑑証明・実印が必要になる
トラブルの可能性低い反対する人、連絡が取れない人が出やすい

不動産を売却するには、原則として相続人全員の同意(実印による押印)が必要です。相続人が2人なら数日で済む話が、15人になると、一人でも反対すれば売却そのものが止まってしまいます。これが、相続放置が「時限爆弾」と呼ばれる理由です。

【実録】相続人が全国15人になった売却案件

数次相続で相続人が全国15人に散らばった状態を日本地図で示したイメージ

ここからは、神戸都市開発が実際に担当した案件をお話しします。相続が発生してから長年名義変更がされないまま放置されていた実家で、いざ相続人を調べてみると、最終的に全国で15人にまで膨れ上がっていました。

誰が相続人か分からないところからのスタート

最初の壁は、そもそも「誰が相続人なのか」を確定させることでした。数次相続が複数回発生していたため、戸籍をさかのぼって調べていくと、被相続人本人も存命中には把握していなかったであろう相続人が次々と見つかりました。北海道から九州まで、住所もバラバラです。

正直に言うと、15人のうち大半は、お互いに会ったこともなければ、顔も名前も知らない間柄でした。同じ家系ではあっても、これだけ世代が離れ、地理的にも散らばってしまうと、もはや「親戚」という感覚すら薄いのが実情です。

売却のハンコを押さない人がいた

相続人全員の所在が分かったところで、次は意向確認です。15人もいれば、当然ながら全員が同じ考えではありません。中には「売却に反対」という方もいました。

先ほどお話ししたとおり、不動産の売却には相続人全員の同意が必要です。つまり、他の14人が「売ってすっきりしたい」と思っていても、残る1人が首を縦に振らない限り、この売却は法律上、一歩も前に進みません。
実際にこの案件でも、まさにこの「14対1」の状況で、話が完全に止まってしまった時期がありました。

理由を伺うと、思い入れというよりも、過去の家族間の経緯からくる感情的なわだかまりが大きいようでした。ここで神戸都市開発は、感情的に説得を試みるのではなく、現実的な選択肢を淡々とお伝えすることにしました。「このまま合意いただけない場合、共有物分割請求訴訟(裁判所を通じて共有状態を強制的に解消する手続き)を検討せざるを得なくなります。時間も費用も、みなさんの負担になります」と、事実としてお伝えしたのです。

脅すつもりは一切ありませんでした。ただ、感情的な理由で反対を続けることが、結果的にご自身にとっても得にならないという現実を、正直にお伝えしただけです。最終的には、その方にもご納得いただき、任意での売却に応じていただけました。

行方不明の相続人と、弁護士による不在者財産管理人の選任

さらに厄介だったのが、15人のうち1人が行方不明だったことです。戸籍の附票(住所の履歴が分かる書類)を確認しても、現住所にたどり着けませんでした。これでは、その方の同意を得ることができません。

このようなケースでは、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立てるという方法があります。不在者財産管理人とは、行方不明者に代わって、その方の財産(この場合は相続分)を管理する人を裁判所が選任する制度です。
神戸都市開発が提携している弁護士に依頼し、申立てから選任まで進めていただきました。この手続きには数か月かかりましたが、これがなければ、そもそも売却自体が成立しませんでした。

全体を通じて、神戸都市開発が担当したこと

15人という人数になると、単に「専門家に任せておけば終わる」という話ではありません。売却価格の設定一つとっても、15人それぞれに納得していただく必要があります。安すぎれば「もっと高く売れたはずだ」という不満が出ますし、時間をかけすぎれば「早く進めてほしい」という声が出ます。
この価格設定と、15人の意見集約を、神戸都市開発が窓口となって行いました。

正直、かなり骨の折れる作業でした。全国に散らばる相続人一人ひとりに連絡を取り、状況を説明し、進捗を報告し、時には電話で、時には手紙で、粘り強くやり取りを重ねました。
面識のない相続人が大半という状況で、信頼関係を一から作りながら進めていく——この地道な積み重ねがなければ、15人全員の合意には至らなかったと思います。

司法書士による戸籍調査と相続登記、弁護士による反対者への説得と不在者財産管理人の選任、そして神戸都市開発による価格調整と全体の取りまとめ。それぞれの専門家が役割を果たし、最終的には無事に売却まで完了しました。

なぜここまで放置されてしまうのか

ここまで読んで、「なぜそんなになるまで放置してしまうのか」と思われるかもしれません。ですが、実際には多くのご家庭で起こり得ることです。

放置される理由の多くは、悪意や無関心ではありません。「今すぐ困っていないから」「相続人同士が仲が良いから急ぐ必要がないと思っていた」「手続きが面倒で後回しにしていた」といった、ごく自然な理由がほとんどです。
特に、相続した不動産に誰も住んでおらず、固定資産税さえ払っていれば当面問題が表面化しないケースでは、放置期間が長引きやすい傾向があります。

しかし、放置している間にも、時間は確実に進んでいます。今の相続人が高齢になり、次の相続が発生すれば、また新たな相続人が加わります。「今は大丈夫」が、次の世代にとっての大きな負担になるのです。

今、相続登記は「義務」になっている

かつては、相続登記(不動産の名義変更)に期限はなく、放置していても罰則はありませんでした。しかし令和6年(2024年)4月から、相続登記が義務化されています。

項目内容
義務化の開始令和6年(2024年)4月1日
期限相続の開始(および不動産の取得)を知った日から3年以内
過料正当な理由なく期限内に登記しない場合、10万円以下の過料
対象施行日より前に発生した相続にも適用(経過措置あり)

この義務化は、まさに「相続放置による数次相続の連鎖」を防ぐことを目的の一つとしています。過去の相続についても対象になるため、「うちも実は名義変更していないままだ」という方は、今のうちに一度、現状を確認しておくことを強くおすすめします。

放置する前にできること|専門家連携がなぜ必要か

相続人の調査・交渉・売却を司法書士・弁護士・神戸都市開発が連携して進める専門家チーム

15人の案件でお分かりいただけたと思いますが、相続人が増えてからの対応には、複数の専門家の力が必要になります。

専門家この案件で果たした役割
司法書士戸籍をさかのぼって相続人を確定させる調査、相続登記
弁護士反対する相続人との交渉、行方不明者の不在者財産管理人選任の申立て
不動産会社(神戸都市開発)売却価格の設定、15人全員との意見集約・進捗共有の窓口

もちろん、理想は相続人が少ないうちに手続きを終えることです。ですが、すでに放置されてしまい、相続人が増えてしまった場合でも、打つ手がないわけではありません。今回の案件のように、専門家がチームを組むことで、時間はかかっても着地点にたどり着くことは可能です。

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放置した年月が長いほど、状況は複雑になっていきます。ですが、複雑になった状態からでも、解決できないわけではありません。まずは現状をお聞かせください。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 相続人のうち1人でも反対したら、本当に売却は不可能なのですか?

原則としてそのとおりです。不動産の売却は法律上「共有物の処分行為」にあたり、相続人全員の同意がなければ進められません。ただし、反対の理由によっては、丁寧な説明で任意の同意を得られることも多くあります。それでもどうしても難しい場合は、共有物分割請求訴訟という法的手段も選択肢としてあります。

Q2. 相続人が増えすぎて、もう自分たちでは手に負えません。それでも相談できますか?

もちろんです。今回ご紹介した15人の案件のように、相続人が多く複雑な状態からのご相談は珍しくありません。まずは相続人を確定させる戸籍調査から始めます。

Q3. 相続人の中に行方不明の人がいます。売却はあきらめるしかないですか?

あきらめる必要はありません。家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てることで、その方の同意がなくても手続きを進められる場合があります。弁護士と連携して対応します。

Q4. 一部の相続人がどうしても売却に反対しています。

反対の理由を丁寧に伺ったうえで、共有物分割請求訴訟など法的な選択肢も含めてご説明します。実際には、現実的な選択肢を正直にお伝えすることで、任意にご納得いただけるケースも多くあります。

Q5. 相続登記の義務化について、過去の相続も対象になるのですか?

はい。令和6年4月の施行日より前に発生した相続についても、経過措置のうえで義務化の対象になります。心当たりのある方は、早めに確認されることをおすすめします。

Q6. 相続人が全国に散らばっていて、集まることができません。

神戸都市開発は全国対応で、電話・郵送・オンラインでのやり取りを中心に進めることが可能です。今回の案件でも、相続人の方々に一度も対面せずに手続きを進めた方が複数いらっしゃいました。

まとめ|「まだ大丈夫」が、いちばん危ない

繰り返しになりますが、不動産の売却には相続人全員の同意が必要です。これは法律上の絶対条件で、相続人が2人でも15人でも変わりません。
そして相続を放置すればするほど、数次相続によって相続人の数だけが増えていき、「全員一致」というハードルは静かに、しかし確実に高くなっていきます。

神戸都市開発が担当した案件では、最終的に全国15人にまで膨れ上がり、売却のハンコを押さない方、行方不明の方への対応、そして15人分の価格交渉と意見集約と、通常の相続とは比べものにならない労力がかかりました。それでも、司法書士・弁護士・神戸都市開発の三者で役割分担しながら、粘り強く進めることで、最終的には無事に売却まで完了しています。

「今は困っていないから」という理由で放置している相続不動産があるなら、それは次の世代にとって「全員の同意を集める」という、より重いハードルを残すことになりかねません。しかも今は、相続登記が義務化され、放置そのものにリスクが伴う時代になりました。

まだ相続人が少ないうちに、全員の同意を得て手続きを終えるのが一番です。ですが、すでに複雑になってしまった場合でも、諦める必要はありません。お気軽にご相談ください。

この記事は、神戸都市開発株式会社(Team Next)代表取締役・福井健太が、20年以上の不動産実務の経験をもとに執筆・監修しています。税制・法制度の内容は2026年時点の情報です。制度は改正される可能性があるため、実際の適用にあたっては専門家に必ずご確認ください。

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